#246 天気の子/どんな世界でも大丈夫

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天気の子

感想

さすが、新海監督。素晴らしかったです。悲しいニュースが流れる毎日、雨が多く鬱陶しい毎日。そんなときにこそ、観終わったあと、清々しい気持ちにさせる、そんな力のある映画だと思います。

『君の名は。』と公開当時の反響に比べ、批判が多いのも当然だと思います。それだけいろんな人が観ているということ。あえて賛否両論あるものを作ったのも含め、”成功”した映画だと思います。以下3つに分けて自分の感想を書いてみます。

【1】『君の名は。』と似ている点

『天気の子』は間違いなく、誰もが楽しめるような「エンタメ映画」です。『君の名は。』も同様なので、どうしたって、前作と比較するし、なんだか似たような雰囲気に見えてしまうかと思います。良い意味では、前作と同じように楽しめる作品なのですが、悪い意味では、同じテイストなので、なんだか似ていて「新しさ」を感じさせないこと。

以下が似ている点です。

・テンポが良くて楽しい
・映像が美しい
・音楽がいい
・少年少女の青春(恋愛)要素
・古来からの伝承
・叫んで走って、出会う感じ
・(災害に対する)自然観
・希望に満ちたストーリー

独自の自然観について、どう感じるかで好きか嫌いか分かれそうです。自分は『君の名は。』を観たときに、震災に対しての希望や人とのつながりが強く感じる熱いメッセージが伝わり、胸が熱くなりました。今回は、今起きている悲惨な事件を前に、別の意味で「生きる」ことについて考えさられる熱い映画だと思いました。→こちらは、以下「【3】ストーリー・設定」でもう少し深掘りします。

以上、ラストも含め「メッセージ性」以外にその他、賛否両論ある点としては、キャラクター描写やあるところの設定、タイアップの多さなのかなと思います。そのあたりもあとで書いてみます。

今回も、音楽が素晴らしいですね。最終的に、RADWIMPSの壮大なプロモーションだったんじゃないか!と思わせるんですが、それでも良かった。「愛にできることはまだあるかい」「大丈夫」「グランドエスケープ feat.三浦透子」すべてが、ちゃんと映画ともに意味のある音楽だからこそ。あと、音が一瞬なくなり、静かになるのも良いですよね。映画館でみんなが静かになって、誰も音を出せない緊張の瞬間があるのは映画館で観てこその醍醐味だと思います。

【2】作画のクオリティ

映像の美しさは、前作同様。IMAXで観たほうがいいですよ。現実以上にきれいだと思わせる、作画の美しさ、リアルな現実風景。丁寧に描かれています。クリエイターの人、本当にリスペクトです。こんなのどんだけ時間かけて作っているのって。

新宿の雑踏(ビルと看板)やネットカフェ、歌舞伎町のネオン街、渋谷、代々木、六本木ヒルズ。映画を観終わったあと、聖地巡礼で行きたくなってしまいます。日稲荷神社、代々木会館、気象神社(高円寺氷川神社)とか。

あと、タイアップの多さ。ココは批判にもつながるかもしれないのですが、日常を描いているという点ではリアルです。新宿マンボーとか、高収入バニラは新宿通る人は笑っちゃいますよね。サントリー、ローソンのからあげクン、日清のカップラーメン、チキンラーメン(あの料理作りたくなった)、どん兵衛。(IMAXで観たら、新海誠ヌードルもらえました!)Yahoo!知恵袋だけなんか時代錯誤感ありました。。(これって今でもあぁやって質問するのかな?)

【3】ストーリー・設定

語れる点としては以下ですかね。

・キャラクター描写・声優
・銃について
・変態性について(一言「おっぱい」について。批判は特にないです)
・ラストについて(メッセージ性)

なぎくんのキャラクター素晴らしかったですね。あと小栗旬さん、本田翼さんの声優としての上手さは文句なしだと思いますが、主人公である帆高のキャラクター描写に賛否生むと思います。ただ彼の過去を掘り下げなかったのは、意図されたものらしいです。以下「トラウマで駆動される物語を作りたくなかった」とあります。過去に囚われた人(トラウマ)を描きたかったのではなくて、今の衝動で生きている若者を描きたかったんだろうなと思います。

▼参照:「『君の名は。』に怒った人をもっと怒らせたい」――新海誠が新作に込めた覚悟

確かに幼稚だなと思う点は結構あったりします。けれども、それも含めて、大人を描いた物語ではなく、「若い子たちの物語」だからだと。
トラックの雷のシーンや警察とのやり取りなどは、大人としての「正しさ」をちゃんと描いている反面、それが「本当に正しいのか?」ということも含めて語りかけているような気がしました。

大人になっていくにつれて、自然と社会の規律に従順になっていくけれども、若いときは、素直に従えなくて、抗ったり、そっぽ向いたりすると思うんです。ルールを作った人、それぞれの価値観が一緒なわけではないわけで、それでも誰でも住みやすくするために社会のルールを作っているのですから。

そんな対立をうまく描いているなぁと思いました。

–以下ネタバレ含みます—-

神主さんが観測史上なんてここ70〜80年くらいのことを言っているというシーンやラストに、帆高があんな東京にしてしまって嘆くところで、あの瀧くんのおばあさんがかける、「昔に戻っただけ」という言葉が全てを表していると思いました。

歴史をみても、理不尽な世界でも、先祖様はみんな生きていた。みんなどんな状況でも、ちゃんと生きていたんですよね。過去を振りかえらず、今できることをしてきた、その積み重ねが今。作り上げた社会は壊れることはある。諸行無常の精神ですが、それでも「大丈夫」と答えてくれる人がいる。その意味で、あんな世界になっても、自分は希望ある未来がある、ハッピーエンドだったなと感じました。

愛にできること。みんなのヒーローになろうと思わず、半径1m以内にいる目の前の人を守ること。会いたい人に会いたいということ。
新海監督が「政治の言葉、報道の言葉、教科書の言葉では、絶対に言えないことを叫ぶ映画を作った」と述べていた賛否両論あるかもしれないことは、「天気なんて、狂ったままでいいんだ」ということ、目の前の大事な人が救われるなら、他のことはどうなってもいいんだという価値観だと思います。それこそが、『君の名は。』とは違ったアンサーだと思います。

「世界を救う?」そんなこと考えるより、自分の目の前にいる大切な人のこと考えろよ、その考え方は自分も共感します。目の前の人救わなくて、誰を救うんだって。感動しました。ファンタジーでありながら、現実を描く、新海誠監督の作家性素晴らしいです。

どんなに理不尽な世界でも、狂っているような自然の脅威や、事件が起きても、「大丈夫。生きていけるよ。」という温かいメッセージをもらった気がしました。天気の悪いときに落ち込んでいるときに観たい素晴らしい映画です。

ぽっけ
辛いニュースが続く毎日ですが、観ると希望をもらえる映画だと思います!

作品詳細

『天気の子』
満足度:★★★★☆(4.5)
ジャンル:アニメ
監督:新海誠
年度:2019年

・公式サイト:https://tenkinoko.com/

©2019「天気の子」製作委員会