#243 真っ赤な星/胸がざわつくほど素晴らしい映画

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感想

なんだよ、ただの素晴らしい映画だったじゃないか。切なくて愛おしい、二人の女性を描いた映画。若手監督の映画だと思って、舐めて観てはいけない。呉美保監督の『そこのみにて光輝く』に何かを感じた人は、きっとこの映画も好きになると思います。

以下簡単ですが、その魅力をご紹介!

脚本が抜群!

家にも学校にも居場所がなく、孤独を抱える14歳の少女(陽)。
身体を売ることで生計を立てる無気力な元看護師の27歳の女性(弥生)。

交わることのない二人が出会い、心にぽっかり空いた穴を埋めるかのように寄り添い生きていく物語。

なんだか、バディムービーを見ているかのようでした。一夏という短い間ですが、二人が一緒に暮らしてくにつれて、それぞれが抱える過去や環境が、少しずつ明らかになり、なぜ二人が出会って、惹かれあったのかが、分かっていきます。

年齢や環境や、抱える問題は違うけれども、この二人が出会うこと、一緒にいるのは必然だったんだろうなって思いました。相手の傷を痛いほど理解できるし、そういう意味で似ている二人。

弥生が言う、
「好きだから、やめるの」
という台詞。

弥生は、陽に自分のようになってほしくないという思いから、遠ざけようとしたし、反対に陽は、自分の傷を癒してくれるたった一人の存在だったからこそ、一緒にいたいと思ったんだと思います。

陰と陽の関係。交わることはないけれど、きっと見つめる先は同じ。必要と思ってくれる、肯定してくれる人がたった一人でもいることで、どれだけ人は救われるか。ラストは、“希望”を見せてくれる。

なんだよ、物語の構成(脚本)が完璧じゃないか。

また、ネグレクトや売春その他ネタバレになるので書けないですが、今問題視されるような社会性のあるテーマも描いていたのも良かった。

演出や映像も素晴らしい!

しかも、演出、映像の撮り方も素晴らしいんです。冒頭のシーンなんて、さすがだし、銭湯や台所、車、天文台のシーンの二人の後ろ姿が良い。いろんなコントラストがあるんですよ。

赤と青。
太陽と星。
もちろん、弥生と陽も。
その他、観ていて引き込まれるし、もう一度映画館で観たい!と思わせる映像の美しさがあります。

主演の二人が素敵!

文句なしにキャストの方の演技も素晴らしい。

14歳の少女・陽を演じたのが、『みつこと宇宙こぶ』で主演を務め、小松未来さん。
27歳の元看護師の女性・弥生を、桜井ユキさん。

難しい年頃の女の子を演じた小松さんの自然な演技はもちろん素晴らしいのですが、常にタバコを吸って、けだるい感じに生活する桜井ユキさんの、お姉さんぶりが大変素晴らしかった。

『娼年』のリョウの同級生役のビュアな女性を演じていたので、全然イメージが違くて驚きました。今回、めっちゃハマリ役。かっこいい。演技の幅が広くて、今後にも注目です。

22歳の天才現る!

才能って怖いな。だって、これを撮ったのは、若干22歳の監督なんだから。

ヨーロッパで最大の独立系映画祭、イギリスのレインダンス映画祭にてコンペティション部門出品されました。日本人史上最年少とのこと。

井樫彩監督の過去作の短編『溶ける』は、少女の青春が描かれていましたが、今回の長篇デビュー作『真っ赤な星』は、尺が長くなることで、年の違う二人の女性を描き、深みがぐっと出た気がしました。

22歳という年齢にとらわれず、気になる人は観て欲しい。正直、こんなの22歳の若い方に撮れるなんて認めたくないけれども、こういった映画を撮ろうとする若い人たちを、もっともっと応援したいですよね。

『みちていく』の竹内里紗監督や4月に情熱大陸で特集された現役女子大生映画監督・松本花奈さんなども衝撃的でした。最近の20代の女性監督がやばい。

藤沢国際映画祭を応援!『みちていく』を鑑賞して。

2015.11.04

1980年代後半~90年代生まれの12人の新進監督が参加するオムニバス映画も来年公開されるらしいので、こちらも注目ですね。
▼参照:山戸結希監督プロデュース映画「21世紀の女の子」に12人の新進監督が参加

映画ならではの醍醐味とは?

なんでも言葉で説明しちゃうテレビドラマは、分かりやすいし、気軽で見やすい反面、深く考えさせて、後々はっと気づかせる、感じさせることができにくい性質を持っているかと思います。

画面全体を顔アップなんかにして、人の感情の起伏を表さなくても、映画はしっかりと伝えることができる。

青空に浮かぶ赤いパラグライダーや、澄んだ空に光り輝く星や、情熱的に輝く夕日を、映し出すことで、人の捕らえどころのない気持ちを感じさせることができます。

カーテンの穴。
下着の入ったクローゼットの下にある写真。
ひとつひとつのシーンに意味があり、伏線となる。

一見、無駄な余白(間)が、深い余韻を持たせてくれる。表現の幅が広いからこそ、「映画っていいなー」って思うんですよね。

今回ご紹介した『真っ赤な星』は、決して誰かと観て楽しむような映画ではないかなと思います。人によっては、映画の世界に引っ張られたまま、引きずってしまうかもしれません。感想を誰かに言うのも憚れるような映画。ただし、それだけ、誰かの心にそっと寄り添ってくれる、心に残る映画なんだと思います。

なんだか、うまく言えないですが、孤独で寂しいって思うときにこそ、この映画を観たら少し希望が見えて落ち着くんじゃないかな。

一言で映画を表すと、「埋める」かな?
互いの穴を「埋めよう」とするけれど、簡単には埋められない。愛おしくて、ただ一緒にいたいと寄り添う、一種の恋心と自分の明るい未来への願いが込められた、ほんのり切ない映画。

12月1日(土)より、テアトル新宿ほか全国順次公開です。

ぽっけ
その才能に思わず嫉妬!22歳の若手監督の長編デビュー作!お世辞抜きで、本当に素晴らしい映画なので、ぜひ観て!

作品詳細

『真っ赤な星』
A Crimson Star
満足度:★★★★☆(4.5)
ジャンル:ドラマ(ラブストーリー)
時間:101分
監督:井樫彩
年度:2017年
製作:日本

・公式サイト:http://makkanahoshi.com/

©「真っ赤な星」製作委員会