
『海よりもまだ深く』
After the Storm
満足度:★★★★☆(4.5)
ジャンル:ドラマ(ダメ人間,夢追い人,家族,日常)
時間:108分
監督:是枝裕和
年度:2016年
製作:日本
配給:ギャガ
主題歌:ハナレグミ「深呼吸」
▼ハナレグミ – 深呼吸 【Music Video Short ver.】(Victor Entertainment)
ストーリー説明
『海街diary』などの是枝裕和監督が、『奇跡』以来の阿部寛と樹木希林とのタッグで、なかなか大人になれない男の姿を描く感動のホームドラマ。小説家になる夢を諦め切れないまま探偵事務所で働く男が、たまたま実家に集まった母、元妻、息子と台風の一夜を過ごすさまを映す。阿部と樹木のほか真木よう子や小林聡美、リリー・フランキーらが共演。思っていた未来とは少し違う現実を生きる家族の姿が印象的につづられる。
引用:シネマトゥデイより
劇場鑑賞
立川シネマシティにて。

○感想
はぁ、また好きな映画を観てしまった。
夢を、未来を思い描き、なかなか大人になれない男の姿を描くドラマ。
愛すべき映画です。
レイトショーで観ました。
『海街diary』と同じく夜に物思いにふけながら一人で観るのに最適な映画ですよね。
家族、子どもを描いたら右に出るものはいないですね、是枝監督!さすがです!
父親、そして夫婦を描いた『そして父になる』に近いものも感じます。
はっきり言って何も劇的なことは全く起きない映画なのですよ。監督の映画は。
日常をリアルに描いている。私たちにとっても近い。だから胸打たれる。
それが実現されるのは、脚本もそうですが、演者の力量もものをいいます。
監督映画でお馴染みの、阿部寛さん、真木よう子さん、樹木希林さんはもちろん、
小林聡美さん、子役の吉澤太陽くん、橋爪功さんもとっても良いんですよね。
リリー・フランキーさんが「おれの会社を潰す気か」といって横に座るシーンとかぞっとする怖さが滲み出てますよね。質屋のミッキー・カーチスさんも最後泣かせるんですよ。
そして池松壮亮さん、本当に癒しポジですね(参照:「海よりもまだ深く」感想ーなりたいものになれなかった大人達へ – 頭の中もハッピーな人)
出ている人みんな良いんですよ。はぁ。この魅力なんだろう。
あと、舞台!
樹木希林が演じる母親が住んでいる団地は、東京都清瀬市にあるんです。
冒頭、阿部寛さん演じる良多が実家に帰省するシーンがあって、馴染みある沿線が出てくるんじゃないですか!西武線!ホーム!電車!立ち食いそば屋!
良いですねー。地元感たっぷりで。是枝監督が28歳まで実際に住んでいたの旭が丘団地が使われたとのことです。
東京ですけど、都会の喧騒はなく、愛すべき田舎臭のある西東京エリア。立川も出ますよ。
出てくる”もの(食べ物)”も良いですよねー。
冒頭の煮物のくだりとか。樹木希林さんと小林聡美さんの絡み最高ですね。切手なめなめする樹木希林、萌〜ですよね。
大福。「下町ロケット」でも阿部寛の大福食べるシーンは印象的でしたよね。白いの口についちゃって。狙ったのかな。
モスバーガー。マックじゃないよ!ちょっと健康志向ですからね、モスは。笑
固いカルピスアイス。冷蔵庫臭。カシャカシャ頑張る阿部寛。ありありですよね。監督もあったんだろうなぁって思います。
カレーうどん。「賞味期限を気にするのは男」分かりますー!くすって笑ってしまいましたよ、あの阿部寛。
人生ゲーム。「洒落にならない」そりゃそうだ。
硯。お父さんの。これが最後泣かせますから。
そして、野球(フォアボール)、宝くじ。
この二つがこの映画の肝となる象徴的なものです。
良多は、父親を嫌います。そして、自分は父親みたいになりたくないって。地方公務員になることが夢でした。それが今では夢見る小説家(探偵事務所で働いて生活している)
良多の息子は、今ホームランを打つことを目指さず、確実に前に進めるフォアボールで良いと思っています。内心、親みたいになりたくないと良多のように思っているからだと思います。
宝くじ。逆転する夢がある。単なるギャンブルなのか?
300円は当たると知ったとき、元嫁の真木よう子が嵐の中探しに行くシーンは最高でしたね。
15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのあることでそれにしがみつき、おれならいつかできる、大器晩成なんだと今を生きるのではなく、未来に生きる男。
一度は愛する家族もできたけれど、それも失ってしまう。失って初めてその大切さに気づき、未練タレタレで生きる日々。
どうしようも男だけど、どこかわかる。ほっとけない男です。
だから、あぁいう態度取りながら元妻も、誰かがそばにいてあげないとと思って付き合ってあげているのだと思います。そんな存在なのです。
(おつきあいしている彼に良多の小説読んだ感想聞いているところとかに出ています)
ついつい3回行ってしまう良多の癖も自信のなさが出ているのかもしれません。
なんで、男は夢ばかり見て、今を大事にしないのか?
男性は、空想が好きで、女性は現実的な方が多いというのはよく言われていることですよね。
未来を大事してもつまらない。幸せってのはね、何かを諦めないと手にできないものなのよ
樹木希林の名言!メモしておかないとダメですね。
いつか、誰かの役にたつって思いたいけれども、今自分自身が楽しんで生きていなければ、きっと周りの人も楽しくないんだと思います。
海よりもまだ深く誰かを愛しているからこそ、今の自分にできる何かがきっとあるって。
なんかちょうどドラマ『重版出来』にて天才と凡才の話があって、自分に真剣に向き合わずに、いつかきっとと思っているプロの漫画家になれないアシスタントの話と重なって、
とても切なくなりました。
読んで頂いて、ありがとうございます。
●参照
(C) 2016フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ
○予告
○公式サイト
映画『海よりもまだ深く』公式サイト
○参考に読んだおすすめ感想ブログ/サイト
・「海よりもまだ深く」感想ーなりたいものになれなかった大人達へ – 頭の中もハッピーな人
→「海よりもまだ深く」のタイトルの意味が書かれています。
・『海よりもまだ深く』を見た。 – リンゴ爆弾でさようなら
→父の形見のシャツを着るというシーンは確かに良いですよね。
・映画「海よりもまだ深く」感想 解説 みんなどこかで壊れた人生を送ってる。 – モンキー的映画のススメ
→姉のフィギュアスケーター下りの深い描写なるほどなと思いました。”中村ゆりが演じる良多の同僚女性が放つ一言”これも深いですよね。