#229 恋人たち/”よし”と前を見て言えるから

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恋人たち /満足度★★★★(4)koibitotachi/ジャンル:ヒューマン/140分/監督:橋口亮輔/製作:2015年/日本/配給:松竹ブロードキャスティング

 

腹一杯食べて、少し笑っていればそれで生きていける

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ストーリー説明
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橋梁点検の仕事をしているアツシ(篠原篤)には、愛する妻を通り魔殺人事件で亡くしたつらい過去があった。自分に関心がない夫と考え方が違う姑と生活している瞳子(成嶋瞳子)は、パートの取引先の男と親しくなったことから平凡な日常が変わっていく。エリート弁護士の四ノ宮(池田良)は友人にひそかな思いを寄せていたが、ある日、誤解が生じてしまい……。

引用:シネマトゥデイより

○感想
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普段ブログに映画の感想を書くとき、自分がつまらないと思った映画は書かないというのが大前提にあるのですが、それ以外にいくつかパターンがあります。
まずは、とにかく自分が好きで好きで、他の人にも観てほしいと思った映画
また、自分が好きだったけど、おすすめしづらいなぁと思ったけれど、備忘録として書いてしまう映画

今回上記二つにも当てはまらなくて、自分が好きとは言えないのだけれど、なんかとにかく書きたいと思う映画でした。かつ、多くの人におすすめできる!映画でもないので、(東京で上映されているのは一館のみということで分かると思いますが)ひっそり書いてみます。

あまりにもリアルすぎて観てて辛い。けれども2時間20分夢中で見てしまう不思議な映画でした。

監督は『ぐるりのこと。』の橋口亮輔監督。『ぐるりのこと。』のみ鑑賞したことがありますが、ご自身の実体験をもとに描いた映画が多いとのこと。今回の『恋人たち』も監督の伝えたいという想いがとても伝わってきました。映画って、エンターテイメントとして観客を楽しませようとして製作される映画(商業的に考えられた映画に多い)と、また製作者自身が伝えたい表現として製作される映画(ミニシアター系に多い)があると思います。

どちらが良いとか悪いという問題ではなくて、後者はその場、時間は映画を観たという快感はないのですが、後々になって思い返したり、考え直したりして深く心に刻まれる映画が比較的多いと思います。私、この映画観て、「いや〜、いやなシーンだなぁ」とか気持ちが良い感じがするものも少なく、映画ならではの気分を高揚する感動さがなく、なんとも言えない気持ちになりました。

でも、とっても心に残っていてこうやって感想を書いているわけです。きっと監督自身も一人でも多くの人に観てもらいたいということよりか、少なくとも一人の人の心に深く突き刺さるものを残せたらと思っているんじゃないかと思います。

3人の主人公がそれぞれ、誰からも共感し得ない悩みに苦しみ生きています。

生きていれば、不条理なことやどうにもいかないようなことに立ちはだかります。目の前にあるものは汚い(クソ)だらけというのも、実は現実だったりします。目の前の現状を打破しようと、なんとかもがいて、もがいていくのですけど、空回りし続けるだけで何も変わらない。答えが見えなくて、知らず知らずのうちに、見知らぬ誰かを傷つけてしまっていることもあると思います。

この先、生きていても何も良いことなんてないんじゃないかって思うこともあるかと思います。でも、ひとはやっぱり劇的に何か変わっていくことを望みます。それを”夢”とか、”希望”とか”きれい”なことに言い変えて、自分を正当化しようとも。。。

でも、実際よくある映画のように劇的な変化ってなかなか起こらないし、本当は側からみたら劇的に変化しているように見えるだけで、その人にとっては小さな変化が積み重なってそれがその結果大きく見えていただけなのかもしれません。

この映画の観てて素敵だなと思った点はそこにあります。正直ここの描写映画にしたいと思える?というようなダサいような所がやっぱり良いのです。これがハリウッド的な映画だと、とっても美しいシーンをあえて実際に起こらないようなシチュエーションでやりますから。シンデレラが白馬に乗った王子様を待つように。それを観て確かに心動きますけど、それは絶対現実では起こり得ないですからね。

この映画で描かれる日常の心動くシーンは、鶏を追いかけたり、その鶏をクイッと殺すとこだったり、それを食べて喜ぶこと。
また、自分が想っている人からもらったペンをみつめて涙を流すことだったり。会社の同僚とお弁当を食べながら愚痴を漏らすシーンだったりします。

同僚の女の子にアメちゃんをもらって、その女の子のお母さんが最近暗いから一緒にテレビを観て笑おうと言っていたことを伝える所とか、ものすごく!!!どうでも良いことですけど、すっごく感動するシーンだったりするのです。

自分がどん底にいたときを想像してください。どうしたらいいかわからなくなって、もう自分のことしか考えられなくなりますよね。そんなとき、ちょっとでも自分の気持ちを共有してくれたり、優しく声をかけられただけで涙が出ます。

自分も、どん底になったとき優しく道を譲ってくれた見知らぬおばちゃんの笑顔に涙が出たり、普通に牛丼食べて笑顔でお釣り返してくれただけで感極まってしまったこともありました。それらはきっと絵的に表現できるものでも、他の大勢の人に共感できるものでもないのですけれども、それでも自分にとっては一歩生きようと思わせるきっかけにしてくれます。

”希望”って実はそんなに綺麗に表現できるものでもなくて、きっと身近にある小さなものに隠されているのかもしれません。

あ、映画の内容について全然書いてませんが、この映画は比較的いやーなやつが多いのですが、その中でもとっても良い人がいます。
それが主人公のアツシの先輩の黒田さん。あの優しそうな目にやられます。

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鬱憤を吐き出しているのを、何も言わず聞いてあげて、「殺しちゃダメだよ。殺しちゃうとさ、こうやって話せないじゃん。ぼくはもっとあなたと話したいと思うよ」ということとか。「世の中にはいいバカと、悪いバカ、タチの悪いバカがいる、あんたはいいバカだよ」とか言うシーンが最高です。

そして、焼き魚食べながら言う言葉。

「腹いっぱい食べて、笑ってたら、なんとかなるよ」

映画を見ているときは泣きませんでしたが、以下の感想を読んで思わず涙が出てしまいました。

映画『恋人たち』大切なものの場所(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー) カゲヒナタのレビュー

黄色いチューリップの花言葉は「叶わない恋」

「恋人たち」というタイトル、なんでこのタイトルにしたのかなぁって考えていたのですが、ちょっと腑に落ちた気がしました。”嫌”な現実と向き合いもがいて生きている3人の主人公。それぞれに恋をしたひとたちがいる。ともに歩むこともできない存在だけれども、きっとそのひとたちがいるから、少し笑ったり、輝いたりできる。少しおしゃれして頑張る主婦の瞳子も、受話器の向こうに誰もいないのに自分の想いを打ち明ける弁護士の四ノ宮も、そしてあの日一緒にあんな綺麗な部屋で過ごしていただろう橋梁点検の仕事をするアツシも、きっと愛おしいと思うひとがいるから、いたからきっと前を向いて生きていけるなってそんな風に思えた映画でした。

読んで頂いて、ありがとうございます。

●参照

○画像:(C) 松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ

○予告

公式サイト

○参考に読んだおすすめ感想ブログ/サイト
映画『恋人たち』大切なものの場所(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー) カゲヒナタのレビュー
橋口亮輔の待望の新作 『恋人たち』 届かない想い? : 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
恋人たち(ネタバレ)|三角絞めでつかまえて

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