#184 紙の月/行くべきところへ行く

NewImage.png
NewImage

紙の月  /満足度★★★★★(5)kaminotsuki/ジャンル:ヒューマン(犯罪)/126分/監督:吉田大八/2014年/日本

 

とんでもないものを観てしまった感だ!!

▼velvet underground「femme fatale」
http://youtu.be/m8IV6lJSm1c

▼後で読む。

▼スポンサーリンク

ストーリー説明
NewImage

バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。一方、自分に関心のない夫との関係にむなしさを抱く中、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に陥っていく。彼と逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚がまひしてしまった梨花は、顧客の預金を使い始めてしまい……。

引用:シネマトゥデイより

○感想

角田光代原作、「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督の映画です。
これはやられました。めちゃめちゃすごい映画観たなって感じました。

「桐島、部活やめるってよ」では、学生時代のよくあるような共感してしまう、何とも苦い気持ちにも何だか爽やかにもさせてしまう映画でした。
今回の「紙の月」は”お金”と人間との関係を描く、とてもエグく、それでいて感情移入してしまう映画。

内容もさることながら、その演出技法が憎い!!それについても以下で書かせて頂きます。原作、映像と音楽、カメラワークなどの演出、そして役者さんの演技全てがマッチして素晴らしい映画になっています。
※原作未見ですが、大きく変わっている点あるみたいです。隅さん(小林聡美)”と“相川さん(大島優子)”が原作では出ないことに驚き。
ニセモノの幸せ 映画版「紙の月」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー カゲヒナタのレビュー

日本アカデミー賞、特に主演女優賞(宮沢りえ)、助演女優賞(小林聡美)期待できると思います(元AKBの大島優子も良いです)。2012年に「桐島、部活やめるってよ」で作品賞取っていますし、2010年は同じく少し重い映画である、湊かなえ原作、中島哲也監督の「告白」が作品賞とっているので、今年はどうかはわからないですが。。

NewImage

内容は、バブル後の日本、銀行の契約社員である主婦がおこす横領事件です。コピーに”平凡な”主婦とありますが、平凡なんかじゃないです。。。宮沢りえですから、相当綺麗です。小林聡美演じる隅より子の方が平凡です。そこの対比がこの映画の肝なんですが。。

自分は観ていなかったですが、今年は、上戸彩主演の昼顔がブームだったみたいで、今回の映画も主婦が若い大学生に恋をしてしまうことから事件が大きくなります。その描き方が、何とも言えなくて、”浮気”というタブーをちょっと良いなって思わせる魔力があります。そこが演出がすごい。宮沢りえが男がいないか期待して振り返るあのシーンや、階段から降りるあのくだりとか、すごい。

そしてその大学生と関係を持つようになり、徐々にほんの少しなんですが、顔色が変わっていくんです。そこが絶妙で、派手ではないですが、仕事のときもやっぱり違う印象を受けるから不思議。

ちょうど「マツコと有吉の怒り新党」という番組で、一種のブームに乗って女性が浮気に走ることへの興味心を悲観的な観方で話していたのを聞いたのを思い出して納得しました。何もかもぶっ壊しても良いと思ったときにそういったことに踏み出してしまうということ。この映画を観ればさらにそれが分かると思います。

旦那との関係や子どもが授からないということの暗示、浮気に走ってしまう必然性が丁寧に描かれています。またそのまま横領に手を汚してしまうということもかなりリアルです。それだけでなくて、幼少のころの経験までちゃんと描いているのだから(かつ自然に)、文句なしに感情移入してしまいます。こんなにドキドキした映画初めてです。

見てはいけないものを観てしまった感というか。観たくない!という気持ちもありますし、でもどうなってしまうんだろうという不安とか、そんな気持ちになってしまう何とも言えない映画です。そこはないだろ!とか突っ込めないんですよね。。それはありそうというリアル感があるので。自分はしないよという立場ではなくて、主人公の心情とその背景がとっても緻密に描かれているので深く入り込めるそんな感じです。

不倫をしているシーンがとても艶美でかつカメラもそのまま長回しにして追いかけて撮ったりそういった演出が、素敵な一瞬を捉えています(不倫は素敵ではないですが)。音楽。あのドスンドスンくる低音の響き。観てる側がすっごい緊張します。

私は、男ですが、決して旦那目線で観てはいけません。それがあるとぶれます。

NewImage

”お金”との関係を描いた映画だと思います。不倫が主テーマではないので。夫婦の在り方とかそういった方向性ではないです。これはやっぱり”お金”をテーマにしていると思います。

私はお金を扱う仕事をしているからか、この横領という事件をとても身近に感じました。誰でも有り得る話だからです。ちょっと借りれば良い。後で返せば同じなんだから。それは誰しも正当化しやすい考え方です。また、たくさんのひとが分担して行う仕事だからこそ、自分のものではない預かっている”お金”という認識が薄れやすいと思います。

どんなに誠実に生きているひとでさえ、”お金”が絡むとひとは変わってしまうことがあります。この映画の主人公がそうだと思います。まじめに生きてきて、正しいことをしているという認識をもっているこそ、一番危ないです。だからこそ、何重にもチェックして、いろんな人の目に入るようにして不正が働らかないように仕組みを作る必要が出てきます。

お金って、ただの紙切れですが、”信用”の象徴です。その小林聡美演じる先輩が、「預かったお金がどう流れるか興味がある」と言った言葉のように、それを考えるのが大事だと思います。感謝が伴わないお金の流れなんて、自分は嘘だと思っています。逆に言えば、お金が動く瞬間って誰かの感謝が伴うものだと思います。恵まれないひとに募金をすること。そのお金のおかげで、生活を送れるひともいます。でもその募金のもとのお金はどこから流れたか??ここが問題。横領したお金で、不倫相手を喜ばした。もらうよりも与えることが素晴らしいという考え。それ自身は合っているかもしれません。ただ、その横領したお金は一体誰のお金か。

ありがちなことだから。

そんなことで許せられないことだと思います。恐らく、主人公を信頼してお金を投資してくれた最初のお客さん。お金をもちろん全額返してもらえていると思いますが、とても残念な気持ちになっていると思います。お金が流れるときに信頼と感謝が流れると思いますが、必ずしもお金が流れなくてもそれが生まれることもあります。ただ単に、お金を渡せば(使えば)幸せでしょと思うほど、簡単ではないです。

自分は友人に多額のお金を貸したり、借りることは絶対のNGだと考えています。それをしてしまうと、お互いの関係に上下関係ができるのは当たり前だし、今までと同じ関係のままなはずがないから。

お金をふんだんに使って豪遊した主人公と、それを指摘した小林聡美が対峙するラストの場面が印象的です。お互いの想いが対立するんですが、ここの場面は名シーンだと思います。

こういった積み重なった悲劇って、誰にでも起こり得ることだからこそ、怖いです。当然自分にも。だからこそ、いろんなことを、それこそお金の流れを”想像”することが大事だと思います。そのために、この映画ってとても良い映画だと思いました。
行くべきところへ行く。それはお金もそうですが、人生もそうかもしれません。身の丈を知るというわけではないですが、本来自分がやるべきところがあるのではないでしょうか。

お金の教育の一貫としても観てほしいなって思いました。(刺激的な場面もあるので、できれば高校生以上ですが)

心から観て良かったと思った映画でした。2時間弱ですが、ものすごく長く感じました。難しい映画ではないです。その演出のおかげで。是非劇場で観てみて下さい。こすって消す月が印象的です。

読んで頂いて、ありがとうございます。

●参照

○予告

公式サイト
Facebook
twitter

○参考に読んだおすすめ感想ブログ/サイト
ニセモノの幸せ 映画版「紙の月」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー カゲヒナタのレビュー
東京国際映画祭 『紙の月』感想、映画は素晴らしい、主人公は最低(映画的には褒めてる)。真面目な人が悪に染まり…最後には… – A LA CARTE
佐藤秀の徒然幻視録:紙の月~自転車で鍛えた脚力
『紙の月』はじまりはちょっとしたこと。 ★★★★ | Emotion3.2
770: やりたいことやりたいじゃないですか -紙の月- 東京 一人暮らし OLのホンネ
映画「紙の月」出演の大島優子を独占直撃 ── 憧れの宮沢りえは「生き様が格好良い」 | THE PAGE(ザ・ページ)
四コマ映画~あの映画を四コマで紹介~
東京新聞:とてつもない映画ができたなぁ 「紙の月」宮沢りえに聞く:放送芸能(TOKYO Web)

●採点基準についてはこちら→映画感想(レビュー)の作法/映画ブログをやっていてよかったなー、という瞬間

●宜しければFeedlyの登録もお願い致します。(週2〜3回更新しています。)
follow us in feedly

▼スポンサーリンク

NewImage.png

良かったらシェアしていただけたら嬉しいです!

2 件のコメント

  • この映画と似たような実体験(犯罪ではないですが、金銭感覚の麻痺という点で似ています)があるものです。
    17歳年下の私と結婚した元夫。子供も生まれ幸せでしたが、浪費癖が気になっていました。お財布の中になくても借金しても欲しいものを手に入れてしまうのです。
    借金はどのくらいあるか分かりませんでした。
    結婚8年後くらいに借金の額がわかった時、安いアパートに移って返しましょうという私と、それなら家を出て行くという元夫。
    結局家を出て行きました。
    この映画と重なったのは、若い頃から借金癖があった上に、
    結婚の嬉しさで浪費癖に拍車がかかっていく心理状態、
    幸せで金銭感覚がどんどん麻痺していく様子、現実に額を
    他人に明るみに出た時の開き直り(謝るのですが本心から悪いと
    思ってなく)、むしろ逃げようとする心理。
    お金に対する意識がずれた場合の怖さ、それで積み上げてきた幸せが崩壊するということを、改めて思い知らされる超リアルな映画を見させていただきました。
    身が引き締まりました。

    • コメント有難うございます。
      大変ご苦労されたんですね。私みたいなものがコメントするのはおこがましいと思いますが、
      お金に関するずれというのは本当に怖いものですね。近くにいてもなかなか気づけなかったりするのかもしれません。

      私、この映画見てて、誰にでも起こり得ることだと思って、見ててすごく怖くなりました。
      自分はそうならないとか、そういうひとの近くにはよらないとかではなくて、起こり得るということを前提にどう”お金”と付き合っていくべきか、
      考えさせる良い映画だと思いました。

      必ずしもエンターテイメントの映画でもないかもしれませんが、多くの方に観て欲しい映画だなと思います。

  • 匿名 にコメントする コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。