#105 銀翼のイカロス/池井戸潤

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満足度★★★★(4)

今作は頭取が影の主役。その決断に震えた。

▼後で読む。


前置き

池井戸潤さんの本は、企業小説であるのでビジネスマンとして共感を得られる内容が多いです。また何とも言いがたいようなドロドロとした人間関係、複雑な感情など上手いのですらすら読めてしまいます。

今までのレビュー

3年前、直木賞を「下町ロケット」で取ってから、「空飛ぶタイヤ」「鉄の骨」「シャイロックの子供たち」「七つの会議」、そして前作の半沢直樹シリーズ「ロスジェネの逆襲」に続いて8冊目になります。

#075 空飛ぶタイヤ/池井戸 潤
#098 七つの会議/池井戸潤
#102 ロスジェネの逆襲/池井戸潤

”池井戸潤”作品リスト

果つる底なき(1998年9月 講談社 / 2001年6月 講談社文庫)
M1(2000年3月 講談社)
【改題】架空通貨(2003年3月 講談社文庫)
銀行狐(2001年9月 講談社 / 2004年8月 講談社文庫)
銀行総務特命(2002年8月 講談社 / 2005年8月 講談社文庫 / 2011年11月 講談社文庫新装版)
MIST(2002年11月 双葉社 / 2005年7月 双葉文庫)
仇敵(2003年1月 実業之日本社 / 2006年1月 講談社文庫)
BT ’63(2003年6月 朝日新聞出版 / 2006年6月 講談社文庫)
最終退行(2004年2月 小学館 / 2007年5月 小学館文庫)
株価暴落(2004年3月 文藝春秋 / 2007年3月 文春文庫)
金融探偵(2004年6月 徳間書店 / 2007年7月 徳間文庫)
不祥事(2004年8月 実業之日本社 / 2007年8月 講談社文庫 / 2011年11月 講談社文庫新装版)
半沢直樹シリーズ
オレたちバブル入行組(2004年12月 文藝春秋 / 2007年12月 文春文庫)
オレたち花のバブル組(2008年6月 文藝春秋 / 2010年12月 文春文庫)
ロスジェネの逆襲(2012年6月 ダイヤモンド社)

銀行仕置人(2005年2月 双葉社 / 2008年1月 双葉文庫)
シャイロックの子供たち(2006年1月 文藝春秋 / 2008年11月 文春文庫)
空飛ぶタイヤ(2006年9月 実業之日本社 / 2008年8月 実業之日本社Jノベル / 2009年9月 講談社文庫)
鉄の骨(2009年10月 講談社 / 2011年11月 講談社文庫)
民王(2010年4月 ポプラ社 / 2013年6月 文春文庫)
下町ロケット(2010年11月 小学館)
かばん屋の相続(2011年4月 文春文庫) – 文庫オリジナル
ルーズヴェルト・ゲーム(2012年2月 講談社)
七つの会議(2012年11月 日本経済新聞出版社)
ようこそ、わが家へ(2013年7月 小学館文庫) – 文庫オリジナル
参照:wikipedia

太字が、読んだことある、ドラマで見たことあるものです。

著者の小説は、現実の会社をモデル(ネタ)にした話が多いので、今回はどの会社なんだろうってちょっと考えるのが面白いのです。

・空飛ぶタイヤ→自動車会社のリコール問題(三菱自動車)
・半沢直樹シリーズ→銀行の内部問題(三菱銀行)
・下町ロケット→ロケット開発の町工場、特許問題(三菱重工、パナソニック?)
・鉄の骨→ゼネコンの談合問題
・ロスジェネの逆襲→IT企業の企業買収問題(楽天、ライブドアなど)
・銀翼のイカロス→航空会社の経営再建化と政治家のカネと政治(不正融資)の問題(JAL/民主党)

◆話の内容について

頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、
500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。
政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い
・引用:amazon

前作「ロスジェネの逆襲」では、銀行の子会社「東京セントラル証券」に出向した半沢直樹のお話。
何かとIT系の企業が世間を騒がした(ライブドア事件など)、2004年くらいの日本を舞台にしていると思います。

今回の「銀翼のイカロス」は自民党から民主党への政権交代が起きた2009年の日本を描いていると思います。また同時に当時経営再建化を急務とされていた日本航空(JAL)とその再建を図るため国交省が設立したJAL再生タスクフォースの問題をテーマにしています。

小説の内容と現実との比較は以下参照。
銀翼のイカロスあらすじ倒産危機
voodootalkさん(amazonレビュー)

◆感想。

恐らく、半沢直樹シリーズを読んできたひとなら、ワンパターン化しているなぁと感じるかと思います。ただ、現代版”水戸黄門”と言われるだけあって、予定調和であっても”スカッとする”爽快感は十分味わえます。悪役をこれでもかというほど悪く描くのも分かりやすくて良いですが、今回はその一部の悪役の心労を少し描いているのが好印象でした。(ラストです)

経済事象についても、債権放棄について、企業内では、合併前の2社による派閥争い。そして政治とカネという問題。
全てリアルだからこそ読みやすい内容です。

個人的に鉄の女こと開発投資銀行の谷川さんが、見えない中、硬い意志も持って戦い続けていたということが文脈の中で知って良いなって思ったのですが、やはり今回の影の主役は、中野渡頭取で異論ないと思います。

「行内融和」に配慮し策士的かつ、冷静な経営判断もする優秀なバンカーですが、ある重大な決断をすることになります。
その中野渡頭取のある決断に踏み込むきっかけになったあの焼き鳥屋のシーン。
あの4Pが素晴らしい!!!是非ここは読んで欲しいです。
そしてラストの紀本常務との話ですね。あそこも胸を打たれます。

テレビドラマで中野渡頭取を演じたのは大御所俳優の北大路欣也さん。始終北大路さんのイメージが頭に浮かびながら読みました。あの役をできるのは北大路さんしかいらっしゃらないと思います。

今回も仕事や生きる上で考えさせる名言があります。

「銀行ってところは、出世だとか保身だとか、そんなことを望まなきゃ、それはそれで気楽な場所だ。ところが、どうしても銀行員ってのは、欲を掻く。それがいけない」

「そうですかね。あんまり無欲なのも考えもんでしょう」

「ただ、欲にも、身の丈ってものがある。身の丈に合わない欲を掻くから、面倒なことになる。人もそうだし、実は会社だってそうだと思いますね。できもしないことをやろうとするから無理がある。結局、そんな会社は誰も幸せにしない。社業もうまくいかないし、社員だってストレスで参っちまう。全ての会社には、その会社に合った身の丈の欲ってのがあるんですよ」
【P329より引用】

銀翼のイカロスの意味は、

飛行機の翼を現した銀翼とギリシャ神話のイカロスの羽をかけていると思われます。

イカロスの羽の話の教訓は、
諸刃の剣だったり、物は使い様ということであったり、驕り高ぶるなということかもしれません。

大企業だからであったろ、運輸や金融という国の根底を担っているというプライドがいろんな障壁となり”悪”を生んでいるのかもしれません。航空業界のような大企業、そして国家、とてつもなく大きな翼。だけれども、そのひとつひとつを担っているのは、その中で仕事をする”ヒト”であるということ。身の丈にあった欲を持ち、それに合うだけのことを尽くせばきっと、気持よくその人なりのきれいな空を飛べるんじゃないかって思いました。

読み終わった後、澄み渡る大空を思い描けるような本でした。

◆終わりに。

「ロスジェネの逆襲」は間違いなく映画で盛り上がる内容だと思いました。今回の「銀翼のイカロス」は正直そんなに派手ではないかなと個人的に。人物も多いですし、ドラマで心理描写等を細かく描いて見せてくれたら面白いなぁと期待してます。

読んで頂いて、ありがとうございます。

◆目次◆

序章 ラストチャンス
第一章 霞ヶ関の刺客
第二章 女帝の流儀
第三章 金融庁の嫌われ者
第四章 策士たちの誤算
第五章 検査部と不可解な融資
第六章 隠蔽ゲーム
終章 信用の砦

◆著者情報◆

池井戸潤(いけいど・じゅん)
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒業。1998年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を受賞。2011年『下町ロケット』で第145回直木賞受賞。他の代表作に『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』や、この作品のシリーズ前作となる『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』などがある。

○参考に読んだおすすめ感想ブログ/サイト

半沢直樹続編「銀翼のイカロス」おもしろかったけどパターン化してきたかも(ネタバレ注意) : つぶやきかさこ~生き方・働き方・考え方+旅
銀翼のイカロス ネタバレ内容予想と倒産危機

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