
満足度★★★★☆(4.5)
生きて帰ることだけを考えた特攻隊の男の感動作
●あらすじと感想。
出版社に勤める24歳の佐伯慶子と4歳違いの弟・健太郎が特攻で戦死した実の祖父(宮部)について、様々な当時の戦友に会いに行って話を聞くという話。
初め会った人は、祖父について「海軍航空隊一の臆病者だった」「何よりも命を惜しむ男だった」「戦場から逃げ回っていた」と言われ、調べるほどなぜそこまでして祖父が生きたいと願っていたのかということが明らかになる。簡単に言うとそんな話です。
太平洋戦争の話です。かなり詳細に史実が書かれています。ゼロ戦など戦闘機の詳細とかそういったことは結構書かれてあったりして、正直関心がなければちょっと読みにくいのはあるのですが、(その辺は読みづらければ飛ばしても良いと思います。そこで最後まで読むのをやめてしまうのはもったいない。私自身結構飛ばして読みました。)
恐らくテーマである、特攻隊で命を落としていった日本人は本当に愛国心のためだったのか?という問いに、実にリアルに、それに人間味あふれた問いが帰ってくる本だと思います。
戦争の話になると、その事実と事実に対する考え方に対していろんな想いを持っている方がいるので、言論するのは非常に難しいのですが、この小説では、特攻隊とテロとは全く違うものだということが書かれてます。
そこに生きてきた人の表に出さない想いがたくさんつまっていると思いました。
私は、武田という元一部上場企業の社長の人の話と景浦という堅気ではない仕事をしている人の話が印象的でした。
死にたくないという想いのさらに奥に、誰かを愛する強い想い。
その強い想いって、いろんな人に良い影響を与えて、運命になっていく。
最後は少し泣いてしまいました。
戦争の小説ですが、一人の真面目な、誠実な男の生き様なを描いた小説だと思いました。
戦争という事実と日本人が結果的にしてきたことそれ自体は、肯定することはもちろんできないのですが、
そこで生きてきた日本人の精神、勇気、生きる力は、誇れるものだと思いました。
自分のルーツとなるご先祖様が、こんな日本人ならと、健太郎のように、なんか必死に頑張ろうと思える本です。
読んで頂いて、ありがとうございます。