#085 何者/朝井 リョウ

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満足度★★★★☆(4.5)

かっこ悪い自分、万歳!!

今年の直木賞に選ばれた本読んでみました。

●対象読者は?

就活を題材にしている小説だから、20代の男女かなぁって思って読んでたんですけど(正直最近の就活の独特の違和感は最近経験した人しか想像できない部分もあるけど)、、それでも他の人の感想等をネットで見てみると何やら40代とか50代とかの人も評判が良い。何よりも直木賞に選ばれたくらいだから、様々な年代の人に読んでも面白い本かなぁって思ったりしました。

でも!!自分はこの本は、SNS(twitter、Facebook、mixi等)をやったことがあって、
かつ、自分から発信することが多々ある人向きの本だと思います。まず間違いなくSNSをやったこと無い人にとっては、意味が分からないことが多いです。
また、他のひとの更新をただ見るだけの人も”何者”に共感を得にくい内容かなぁって思います。

●話の内容、小説のジャンルについて。

人の感情を事細かに描いた群像劇かと思って読んでいましたけど、ラスト30ページで驚きます。ミステリーかというほど、大どんでん返し。騙されました。「え、もしかしてあのときのシーンって、あの人がいったあの人にいった言葉って本当は。。。」って考えちゃうから、もう一回読み返したくなります。

そこがこの本のすごい所だなぁって思いました。

一人称の話だから、こういった話ができるんだと思います。
就活を批判しているひとを批判するひとをさらに批判するという。。

後、内容もさることながら、たくとと瑞月が電車の中で瑞月の家庭の話を聞くシーンで、少女と若い母親を出して対比しているシーンやたくととギンジの演劇と口論し合うシーンを交互に見せるシーンも、文章力として上手いなぁって思いました。

●テーマについて

テーマは、自分とは何者??”アイデンティティ”について。就活で演じる、社会人で演じる、友だちの中で自分を演じる、そして、SNS上で理想の自分を演じる。(確かに演じる世界が非常に狭いけど、それだけ深いです。)

演じる演じないが良いか悪いかはさておき、どれも自分であることに変わりないないんだから、別にそこまで”悪い”自分、かっこ悪い自分を隠したり卑下する必要ないんじゃないかなって思う。twitter上で誰にも教えないサブアカウントを作って人には言えない本当の気持ちをつぶやく人がいることは小説上で知ったけど、んーそれもどうなのかなぁって思いました。多分本名で綴られるSNSだと良いことしか書けない風潮があるんだと思う。。自分は、その人が考える「ダーークな」一面も見てみたいし面白いなって思うんだけれども。。

(話は脱線してしまいますが、twitterって元々”情報共有”するツールだから流行ったんじゃなかったっけ。「この辺でいい店ありませんかー」ってつぶやいたらそれに面識のない不特定多数の人が返してくれたり、自分のおすすめを色んな人にシェアするツールとして。それが何だか知り合いしか見れないようにロックをかけたり、面識のある人同士でしかフォローしなかったり。そういう使い方もあるんだなぁって思うけど、だからこそ、リツイートの数や「イイネ」の数に捕らわれて疲れちゃう人もいるから、それよりも誰かにとって良い情報を与えたいとかあの人が喜んでくれることを教えたいっていうSNSの方が個人的に好きだなぁって思います。。tumblrが一部の人に熱狂的に指示されるのは、良いものをただシェアするだけのSNSだからかもしれない)

自分の考えていることや発することだけが、自分じゃなくて、それをもとにしてした行動や結果も含めてその人自身なんだと思います。裏も人にみせる表もどっちも悪くなくてどっちも自分。

お前、こんなことも言ってたよな、

メールやTwitterやFacebookが流行って、みんな、短い言葉で自己紹介をしたり、人と会話をするようになったって。だからこそ、その中でどんな言葉が選ばれているかが大切な気がするって。

俺、それは違うんだと思うんだ。

だって、短く簡潔に自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉の方がきっと、よっぽどその人のことを表してるんだと思う。

ほんの少し言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげろよ、もっと。

10点でも20点でも良いから、自分の中から出しなよ。自分の名から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ、自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に自分の中のものを置かなきゃ。

そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。100点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって。

ダサくてかっこ悪い今の自分の姿で、これでもかってくらいに悪あがきするしかないんだよ、もう

就活と転職活動をこれでもかっていうくらいしたけど、もう二度としたくないなぁって思い出しました。笑

採用側も、試験に「もしタイムマシーンができたらどの時代に行きたいですか?」とか「自分を動物に例えると?」とか「彼女はいますか、別れたのはなぜですか?」とか回りくどい面接の仕方をするんじゃなくて、ありのまま、聞きたいこと、言いたいことを言い合う方が、お互い良いんじゃないかなぁって思います。

お互い、言いにくいことを言い合う関係。
そんな友情もほんの少しだけ見えるそんな小説でした。

読んで頂いて、ありがとうございます

 

何者

posted with ヨメレバ
朝井 リョウ 新潮社 2012-11-30